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島田荘司のデジカメ日記
第98回
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11−30(金)、井上夢人氏とビートルズの夜。
石塚桜子さんの家を後に中央線に乗り、新宿で降りてMatthewさんとはここでお別れし、渋谷に出て東急文化会館の喫茶店でA井さん、石川良さんと合流した。みなで道玄坂をあがって右折し、ムルギーの前は素通りして、「七面鳥」というカラオケ・スナックに行く。それは、ここのカラオケ・セットが、明日に迫った「龍臥亭の夕べ」の会場に運び込まれるカラオケのセットと同型の機種だと、A井さんが聞き込んできたからであった。
「龍臥亭の夕べ」は、むろんピアニストの大島美智子さんが主役であるが、彼女のピアノの演奏が終ったら、ぼくと井上さんが、ビートルズをカラオケでハモって聴かせる段取りになっている。そこで今夜は井上さんを呼んで、前夜の音合わせとなったのであった。
この夜の会合のもう1つの目的、それは石川良さんと、井上夢人氏とを引き合わせることである。どうしてこういうことをするかというと、昔綾辻氏との対談で話したような記憶があるが、井上夢人氏は、高校時代、クラスメートたちと「宿屋の飯盛り」というバンドを組んでいた。それがプロになり、次第に井上さんが目指していたようなビートルズ等のハーモニーを追求するバンドではなくなったので、井上さんは抜けた。その後、このバンドにヴォーカリストとして入ったのが石川良さんなのであった。奇遇というべきであろう。
ところが井上さん、石川さんは、何故かまだ会ったことがないという。そこで2人の共通の友人であるぼくが、2人を引き会わせることにして、石川さんを呼んだのであった。この話が出てからもう何年にもなる。この宵が、ようやくその実現の時だった。
「七面鳥」で2人を紹介すると、「おお! そうですか」というようなことになって、2人はなかなか意気投合していた。あとのメンバーはというと、A井さんとぼく以外には、W辺さんという井上さん担当の光文社の編集者がいて、役者は揃った、ではさっそく練習を、とメニュー帳を繰りはじめたら、途端に怒涛のごとく客が入ってきて、マイクがなかなか空かない。加えてぼくのところについてくれたフィリピン人の女性が、先日この先でマイケル・ジャクソンを見かけたなどと言いはじめるものだから、この話にも興味があって、全然練習にならない。そこでカラオケ・ボックスにと河岸を変えることにした。
渋谷の繁華街をみなでぶらぷら行き、とあるボックスに落ちつくと、焼きそばとチャーハンとピラフと生ビールを取っておいて、いよいよ朝までのビートルズ大会となる。夢人氏と会うのは久しぶりであるが、会えばいつもビートルズになる。普通作家は、それも50がらみのまともな作家は、こういうことはやらないであろう。松本清張さんが、黒岩重吾さんとプレスリーをハモったなど、聞いたことがない。われわれは本当に新型のモノ書きだなと思う。
その昔、伊豆のどこかのペンションでミタライ会というものをやり、あの時はミタライ漫画同人の人たちを前に、やっぱり井上さんを頼んでビートルズをやった。あの時はギターを弾きながらだから、「ああ四十肩になりました」などと言っていたが、もう四十では足りなくなった。それから10年、今度はSSKサイトの人たちを前にやる。時代は移りかわったが、ぼくはまるきり同じようなことをやっている。こうなったらもう70歳の記念に、熱海の老人マンションの宴会場で、やはりビートルズをやりたいものだ。間違っても浪曲だの都都逸だのはやりたくない。井上さん、今これを読んでいたら頼みますよ。
ぼくはその時、「21世紀本格アンソロジー」に「Helter skelter」という短編を書いていたので、ここでそれをやれとむちゃな要求が出たりした。このようなカラオケ・ボックスで、あのように極限的にハードな曲は、ポール・マッカートニーでもやらないであろう。
明日何をやるか、曲目と、順番を決めながら練習した。ビートルズで2パートのハーモニー、しかもそれがカラオケにも入っているというと、曲目はだいたい決まってしまう。「No reply」、「If I fell」、「All my loving」、せいぜいこのくらいである。あと「Baby's in black」があればいいといつも思うのだが、あったためしがない。そこで後は「Help」だの「Michelle」だの「I call your name」だのを、井上さんが得意のコーラス・センスで無理やりハモると、そんなようなことになる。
今日あんまりガナると、明日声が出なくなるんだよな、などと言い合いながら、結局朝まで歌ってしまった。われわれがやかましい曲をやった合間には、石川さんがしっとりと「ジョニーへの伝言」を歌ったりして、なかなかよい会となった。A井さんが例によって船をこぎ始めたので、おひらきとした。さあいよいよ明日である。井上さんは新宿のホテルに泊まり、明日は恵比寿に来てくれる予定だ。
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