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編集室の窓から
島田荘司のデジカメ日記
第91回
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島田荘司のデジカメ日記
11−15(木)、T橋さんのお見舞い、空振り。
この日は仕事の多い、なかなか多忙な1日だった。新橋第一ホテルでデザイナーの多田和博さんと、「21世紀本格」アンソロジーの表紙デザインの打ち合わせをし、それからA井さんと銀座に出て、ソニービルの角にあるフジヤでお見舞いのお菓子を買い、タクシーを停めて、秋葉原の三井記念病院に、T橋虫麻呂編集者のお見舞いに行く。
原書房にその旨を伝えると、では私もご一緒しますとN瀬社長が言ってくれて、ラビットI毛こと、I毛力哉編集者もこれに同行、総勢4人のお見舞い団体となる。A井さんが、彼らと終始携帯電話で連絡をとり合ってくれ、三井記念病院の玄関で落ち合うことになっていた。
ところがタクシーが病院の玄関前に滑り込んでいったら、玄関のガラス扉の前に茫然と立ち尽くす、N瀬社長とI毛編集者の姿が見えてきた。タクシーから降り立ったら、N瀬社長、開口一番にこう言う。
「すいません、逃亡されちゃいました」
はあと問うと、
「何せ忙しい人ですからねー、さっき急遽外出許可が出たらしいんです。そしたら、さっそくどっかに行っちゃったらしくて、もしかしたら実家に帰ったのかもしれません。なにしろ病院内では携帯電話は使用禁止ですから、連絡のとりようがなくて……、すいません」
とまったく恐縮のていだった。
「ひょっとしてあの喫茶店で、誰かと打ち合わせなんてしていませんかね」
と目の前に見える喫茶店を指さしてぼくが言い、みなでぞろぞろ入ってみたが、さすがにいなかった。この病院が出版社であったなら、当然このあたりで仕事をしているところなのであるが、さすがに入院中ではそれはなかった。しかし、相変わらず元気がよさそうなので安心する。
しばらくお茶を飲みながら、病院内でのT橋さんの、涙ぐましい奮闘ぶりを聞く。これはのちに例の吉祥寺ルノアールで、T橋氏当人にも聞いたことがあるので、これらを総合して以下はお話する。彼は志乃さんなどが書いてくださった「ロシア幽霊軍艦事件」のトリケラ書評欄とか、新聞広告のコピーを大量に持っていて、1枚はむろんベッドの枕もとに貼っているが、日に何度も売店に女の子とだべりに行き、そのたび1枚ずつ、コピーを忘れていくのだそうである。あんまり何度もこれをやるので、売店の女の子に、「あっT橋さん、またコピー忘れたふりして置いていっている」などと言われるようになっているらしい。本が好きそうな看護婦さんの前ではぱったり倒れ、この紙の束を床に撒いて、拾ってもらったりもしたそうだ。
なるほどなぁ、ここまでやらなくてはいけないのだなと、聞いていて深く感動した。ぼくなどは、このSSKの中でさえ、宣伝めいた書き込みを1度もやっていない。こんなことではいけないと大変反省したので、ちょっとたまにはこんなことも書いてみよう。7月に、角川文庫から「三浦和義事件」が出ます。けっこう加筆しています。8月には文藝春秋社から、御手洗ものの新作書き下ろし、「魔神の遊戯」というものが出ますよ。
これは当方、まだゲラも見ていないのだけれど、WS刊のBBSでは、「欲情魔人の遊戯」というパロディの題名がもう出ていて、これはどうやら電池を入れたら動くこけしが登場するようだが、ぼくのはそういうものではなく、スコットランドはネス湖のほとりの、ティモシーという小村で起こる2001年、つまりはつい去年の事件である。だから御手洗さんの最新情報ということになります――、と書いていて気づいたが、これは原書房のサイトであった。
T橋さんは、大勢の相部屋にいるらしいのだが、彼以外の患者はみんな高齢のお爺さんらしい。そこで彼は毎朝1番に起き、「おはようございまーす」とか言いながら、窓のカーテンを開ける役をおおせつかっているらしい。そして夕食時にはみんなに漫談を語って聞かせ、今や病室のアイドルと化しているようだ。だから老人に受けるネタを仕込むので毎日苦しんでいるらしく、頭は結構忙しいらしい。そんなことでいったい骨休めになっているのであろうかと心配になる。
この喫茶店でI毛編集者が、さっき書店で見つけたんですと言って、森博嗣さんの「すべてがFになる」の漫画版をくれた。ぱらぱら見ると、非常に上手な絵であった。
原書房の2人組とはそこで分かれ、A井さんと四谷に出て、今度はSSKではビートニクス弁護士として有名な山下弁護士と会い、3人で会食する。これは四谷の駅前、彼の光伸法律事務所からもほど近い、「おかわり屋」というレストランだった。この店の前は何度も通っており、近くの店にはいくつも入っているのに、ここに入ったのははじめてだった。庶民的な名前と裏腹に、非常にハイセンスなインテリアで、四谷の駅前とは思えない落ちつきがある。食事もおいしく、料理に花火が挿されてやってくるなど、エンターテインメント性も充分だった。SSKの若者にもお勧めできそうである。
食事を終えると、ビートニクス弁護士とはそこで別れ、恵比寿に出て、ピカソという店に行く。これは来る12月1日に行う、「龍臥亭の夕べ」という集いのための候補のお店で、下見である。われわれとしてはもう少しキャパのある広い店がよいのだが、調律のできたピアノが置かれていて、しかもフロアが広いという店は案外ないのだ。ピカソも希望よりは狭く、ピアノもグランド・ピアノではなくなってしまう。しかしお店自体はとてもよい感じで、恵比寿の駅からも近いし、充分に満足して決定した。
とまあ、こんなような1日だった。
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