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島田荘司のデジカメ日記
第39回
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2−9(金)、ターリックの結婚式。
スター・ファラフェルにランチを食べにいったら、隣のクシユウからコック姿のターリックがやってきて、今夜ぼくのパーティに来てくれるかいと言う。パーティ? 何のパーティだいと問うと、結婚式だと言う。誰の? と訊くと、ぼくのだと言う。
何? 君は結婚したのかい? と問うと、そうだと言う。誰と? ああ女性だよ。それはそうだろうが、ずいぶんとまたいきなりだ。今夜7時から、ヴァノゥエンのペルジャン・レストラン「アリエ」で結婚披露パーティをやるから、ハニーと一緒に来て欲しいと言う。隣のクシユウの日本人スタッフも来るからと言うので、そうならこれは行かないわけにはいかない。
行ってみると、アリエはごく庶民的な店で、豪華レストランといった風情ではまったくない。ターリックは今あまりお金がないし、ごく気軽なパーティですませるつもりなのであろう。結婚式は、すでに2人で教会ですませ、今からのはただの披露パーティだ。
ペルジャン・レストランは、アラビアンナイトに出てくるような高級なものなら行ったことがあるが、庶民的なスタイルははじめてだ。高くないペルシャ料理の店など、あったことさえ知らなかった。たぶんアラビックの人たちが気軽に行く店なのであろう。こういうことでもないと、ペルシャ料理の店になど行く機会がない。
ハニーによれば、奥さんはアメリカ人で名前はマージィ、テキサス州の出身。今回がもう3度目の結婚で、前2人のご主人との間に、すでに4人の子供があるという。ご主人の一人とは別れ、もう一人は亡くしたそうだ。職業はインテリアのデザイナー、なかなか有能だからよく稼いでいるとハニーは言う。チュニジアから来たターリックは、今切実にグリーン・カードが欲しいから、この奥さんでいいんじゃないかなと彼は冷静に評した。
パーティ会場は、白人、アラビア人、日本人であふれていた。白人は新婦側の家族、親族、そして友人。肌の浅黒いアラビックたちはターリックの友人、彼の方は国から家族は来ていない。日本人はレストラン、クシユウの厨房仲間だ。フロアで騒いでいる金髪、白い肌の可愛い子供たちが、彼女の連れ子たちなのだろう。まことに国際的な雰囲気だ。
新婦のマージィをターリックが紹介してくれた。彼女はちょっと太った女性で、気さくで人なつこく、人柄がよさそうだった。目鼻だちがくっきりとして、女優のキャシィ・ベイツに少し似ている。ターリックはというと、ダークスーツを着て、彼はスポーツマンで上背があるから、なかなか格好がよかった。
パーティは肩のはるような趣向はいっさいなく、日本のと違ってお偉方の退屈なスピーチなどはない。だいたい年寄りの数は少ない。ただ2人が、友人のみんなにさかんに写真を撮られ、バフェ形式の食事が始まる。これが終わればアラビアふうロックが流れだし、フロアはたちまちディスコティークとなる。アラビア人は陽気で、ダンスが大好きだ。これは長々と続く。アラビア人のパーティは、すなわちダンス・パーティでもある。テキサスから来たらしい彼女の白人の親族も、アラビア人に混じって大いに踊り、楽しんでいる。子供たちも踊りが上手だ。じっと見ていると、バクダッドにでも来たような気分になる。
ターリックは宗教をどうしたのか知らないが、彼のアラビックの友人たちは間違いなくモスリムだろうから、食事にアルコールは出ない。どんなに騒いでいてもみなシラフで、そういう意味では安全なことだ。
やがてベリー・ダンスの時間となり、コスチュームの踊り子がどこからか登場して、セクシーな踊りが始まる。これはアラビア料理にはつきものだ。ひとしきり見物してからは、みんなまたフロアに戻って彼女と一緒に踊りだし、踊り子のコスチュームに紙幣をはさんでいく。ハニーの解説では、このお金は1ドル札では失礼だろうという。
彼女もやや太った女性だった。ベリー・ダンサーというのは、あまり痩せていない方が好まれる。ベリーというのはヘソという意味だから、お腹に多少肉がついている方が動きが様になる。
ハニーによれば、このお店を一晩借りきり、料理と音楽の仕出し、それにベリー・ダンサーを雇って、すべて込みでだいたい3000ドルほどかかったという。列席の友人たちは、だからブーケに、100ドルのチェックの入った封筒を挿し込んでプレゼントする。ぼくもそのようにした。ざっと見渡して、出席者は30組いただろうか、あるいはいなかったかもしれない。だから二人は、少なくとも儲かりはしない。
最後にケーキ・カットがあり、このケーキのおすそわけがあって、それからようやく親しい友人たちが前に出てスピーチをする。これは二人の横に立ち、ライトを浴び、ヴィデオ・カメラの前だ。アラビア式のこれも、なかなか合理的だ。パーティの最初に挨拶があると、話す方は緊張するばかりだ。パーティの終盤、盛りあがって気分がハイになっていれば、楽しい言葉も自然に出てくる。そしてこのヴィデオは、当然二人へのプレゼントとなる。ターリックのラストネームは、ベンエスマイールというのだと、この時はじめて知った。
パーティはまだ続いていたが、少し早目に会場を出た。さりげなくて、なかな気持ちのよい会だった。
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