島田荘司 on line
on line top Weekly Shimada Soji top
編集室の窓から
島田荘司のデジカメ日記
第32回
写真をクリック!大きな画像で見られます。
島田荘司のデジカメ日記
島田荘司のデジカメ日記
島田荘司のデジカメ日記
島田荘司のデジカメ日記
12−22(金)、男装の麗人との夜。
ぼくの知り合いの俳優さんというと、SSKサイトではもう今さら言うまでもない池波志乃さんが大有名で、ほかにも金田賢一さん、中尾彬さんといった有名な人たちがいる。これらの人たちは思想的にも才能的にも、また人柄的にも尊敬できる立派な方たちで、友人でいることを誇りにしているが、もう一人、読者のみなさんにまだ紹介していない女優さんの友達がいる。男装の麗人で、名前を荻須夜羽(オギス・ヨハネ)さんという。
この人は、東京のアンダーグラウンド芝居世界では、もう知る人はよく名を知る有名人で、ファンも大変多い。ただ、ファンは全員といっていいくらい女性で、男のファンはひょっとしてぼくくらいではあるまいか。
この人とは思えばもう長いつき合いで、十年以上も前に、東京創元社のパーティで知り合った。そう言うとなんだかお年寄りのようだが、まだまったく若い、眉目秀麗な独身女性である。彼女は定期的に連絡をくださり、帰国のたび、吉祥寺駅周辺のどこかでいっぱいやることをぼくはいつも楽しみにしている。大変なインテリで、威張ったところがまったくなく、淡々と論理的に話す。電話の声も低く、発想が冷静で客観的で、すぐに自分の場合に引き寄せて話を継ぐということをしない。これはむろんよい意味で言うのだが、本当に女性なのかなと疑う時がある。
この日、劇団ペ天使、第8回公演「百鬼夜行」が江古田駅前の小屋でかかっていた。荻須さんがまた招待状をくださったのだ。ペ天使というのは未生みちるさんという、これも大変才能があって可愛いい、劇作家兼女優さんが主宰する劇団で、これまでやはり荻須さんが出る彼女の作「ゲゲゲの鬼太郎」を、同じ江古田の小屋で観ている。今回の「百鬼夜行」もやはり彼女の作、荻須さんが客演、主演をする。
Room-Sの南雲一範社長を誘い、駅前ビルの中の小屋に行ってみれば、すでに満員の熱気で、招待席はと探すと、ぎょっとするくらいの特等席、舞台すぐそばのど真ん中であった。おかげでストロボ・オフのデジカメで、大変よい写真が簡単に撮れた。しかし舞台上の役者の方からもこちらがまる見えで、気が散るから写真を撮ってはいけませんと、後で荻須さんにおこられた。
荻須さんの芝居はこれまでに何度も観ているが、思えばいつも男性は一人も出ない。常に荻須さんが男性役を担当する。彼女の芝居は、宝塚の舞台がもっと知的にシュールになり、こじんまりした、といったような印象だろうか。しかし今回、ドライアイスの白い靄が舞台床を埋める中、大きな白い翼を背中につけた天使たちが何人も現れて、小規模の芝居とは思われないほどに仕掛けのきいた幻想的な場面があった。おかげでよい写真も撮れた。
今回も荻須さんは、妻のあるサラリーマンの役で、ひょんなことから天国と俗世界を往ったり来たりする。いつもながら、なかなか惚れ惚れとする華奢なよい男ぶりである。よくできた脚本で、笑いあり感動ありで楽しめた。
芝居が終わってから、南雲社長と一緒に小屋近くの居酒屋で一杯やる。共演していた後谷智弥(こうや・ともみ)さんという、熱烈な御手洗ファンを自認する女優さんも合流する。彼女もこのたびは男装し、閻魔の王子を格好よく演じていた。二人と記念写真を撮る。
写真の説明をすると、1番上、サラリーマン北役の荻須夜羽さん(右)と彼の妻。2番目は天国の天使のシーン。以下は居酒屋でのショットで、3番目が荻須さんと私。4番目は後谷さんと私。写してくれたのは当然ながら南雲社長である。
この夜、南雲社長の意外な告白があった。彼は昔、一人の女の子を死ぬ気で愛し、彼女がぐれていたので更生させようと必死で頑張った。その混乱の内で、彼は彼女に腹を刺されまでして、なんとかかたちをつけた。その辛い思い出が、場所といいいきさつといい、「異邦の騎士」にそっくりなのだという。だから最初にあれを読んだ時、どうして? どうしてこの島田という人は、自分のあれを知っているんだろう? とそう思い、呆然と立ち尽くす気分を味わった。以来「異邦の騎士」は、彼にとって特別な小説になった−−−。この話は以前に何度か聞いていたが、この女性がたった今舞台に出ていた未生みちるさんに似ているという。ほうと、しばしみなしんみりとした。
荻須さんのこの次の予定は、11月末から赤坂の「シアターV赤坂」という劇場で、京極夏彦さんの「魍魎の匣」を演じる。これは99年に一度やったものの再演らしいが、興味がおありの方、観劇に行ってみられたらどうであろう。
デジカメ日記 バックナンバー

Copyright 2000 Hara Shobo All Rights Reserved