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島田荘司のデジカメ日記
第31回
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12−18(月)力うどんへのサイン。
東京に舞い戻り、またぞろ吉祥寺ルノアールへの日参の日々が始まる。T橋氏が当季刊onlineの「怒涛の伝言板」に、「島田先生からみなさんへのプレゼントがあります、それはカ……、はーくしょん! ああ風邪をひいてしまいました、今夜はもう寝ます」というような書き込みをしたので、東京に戻ってみたらSSKサイトは、島田荘司が力うどんをご馳走してくれるらしいという噂でもちきりになっており、あちこちで「力うどん、食べたいよー!」という騒ぎになっていた。
これはいけない、一日も早く真実を公表し、プレゼントはうどんでなくカレンダーだと知らせようという話になり、ではせっかくだからサインも入れてということになって、帰国の翌々日、さっそくルノアールでの会見となった。うどんではサインができないが、カレンダーならできる。
見るとT橋氏、自分の猫のカレンダーは持ってきていない。まあこのカレンダーはT橋氏にあげたものではあるのだが、彼にはこれとは別に、猫の箱入りピクチャーカード・セットをおみやげに買って帰ってあげていたので、カレンダーは読者プレセントに廻してくれるものかと期待していたのであった。そういう含みもあってのピクチャーカードだったのだが、尋ねると
「いやあ今朝、神の声を聞きまして……」
とT橋氏は言う。カレンダーを読者にあげてはいけないとは、神も案外不粋なことを言うと思ったら、
「汝、カレンダーは読者プレゼントに供すべしと言われたんですがね、同時に悪魔のささやきも聞きまして、だからぶるぶるぶると言って、カレンダーはさっさと壁にかけちゃいました」
とのことであった。それでまあカレンダーは14部という(だったかな?)、なかなか中途半端な数字となったのである。
T橋氏は銀色のマジック・インキも用意していてくれ、たったの14部であるから、今度は腱鞘炎の心配もまるでなく、サンドウィッチと紅茶のランチ・セットがやってくる前にサインは終了したのであった。
それからはサンドウィッチを食べながら横浜早売り会の首尾を聞く。池波志乃さん、中尾彬さんまでがいらしてくださって、ゴージャスな雰囲気、お二人とも非常に気さくでT橋氏は感激したこと。I毛編集者のかぶったウサギのぬいぐるみは、あれは楽なように見えてけっこうな重労働で、ろくに前が見えない。だから突如巨大なウサギがぬっとそばに忍び寄ってきて、わっ何だと思ったら、トイレに行きたいという。それで手を引いて有隣堂の裏口に向かっていたら、通りすがりの女子高生にくすくす笑われた。確かにヒゲのおじさんが、ピンクのうさぎと手をつないで路地を歩いていたらおかしかったであろう。トイレがすんだら今度は一服したいとウサギのやつが言うので、車の中まで導いた、といったような舞台裏の苦労話をひとしきり聞く。
ここから連想が発展し、学生時代、真夏の炎天下に虎だか熊だかのぬいぐるみを着て、アスファルトの上を行進するアルバイトをした思い出話になった。これまで生きてきて、あれほど苦しかった経験はほかにないとT橋氏は言う。ぬいぐるみの頭部は、かぶったら三度笠のように顎の下で紐を結ぶのだが、この頭が重い。真夏だったから汗が滝のように流れ、目にもどんどん入って前が見えない。それでなくてもよく見えないのに、もうまったく見えなくなって、曲がる場所も自分だけは真っすぐ進んでしまうありさま。おまけにあちこちに悪ガキがいて、舗道からダダッと駈けてきて、ドーンと背中を蹴飛ばす、といったような悲惨な話を聞いた。案外いろんな仕事をしている人だ。
なるほど、石岡君も昔そんなバイトをしてますかね、と言うと、あっ、これはしてますね! とT橋氏。そんな調子で話がまたもりあがってしまい、あっという間に夕方となる。どうもT橋氏とルノアールで会うと、全然仕事をしている感じがしなくていけない。
その夜、カレンダー・プレゼントは季刊onlineで公表されたが、書込みを送信して10分後にはもうなくなってしまった。こんなことなら、もっとたくさん買ってくるのであった。
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