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島田荘司のデジカメ日記
第285回
島田荘司のデジカメ日記
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10−1(日)、巨人×広島戦
先日、後楽園の博物館に行ったおり、久岡さんに巨人広島戦のティケットを4枚もらった。それがこの日のものだった。日曜日のデールデンカード、それも内野の相当よい席であるらしい。
この時そばにいた元早実野球部のI毛さんに、では一緒に行きますかと訊いたら、この日はちょうど具合が悪いと言う。ではと、後日A井さんに会ったおり誘うと、この日は自分、家庭サーヴィスの日なのでちょっと……、という返事である。
まごまごしているうちに前日になってしまい、Trick+Trapでの全集サイン会の後、2次会の「匠」で、今度はN雲さんH野さんに訊いてみたら、これも駄目の返事。どうも日曜日というのがみな具合がよくないらしい。広島戦ではあるし、観たかったのではあるが、これはもうあきらめるほかないなと思った。アメリカに行ってしまったから、以前のようには日本のプロ野球界の情報が入らなくなっていたし、何よりもう優勝が決まっていたから、熱烈に観たいというほどの感じではなかった。久岡さんには悪いが、無駄にするほかはないかなと考えていた。
けれども3次会の和旬のおり、ふと思い出してそばにいたチャトさん、ヤマダさん、えいこさんに、明日の巨人×広島戦、後楽園ドームのティケットがあるのだけれど、行きますかと訊くと、即座に「行く行く!」とみな言う。それで、翌日4人で野球観戦にいくことにした。
しかしなにぶん朝まで和旬にいたものだから、午後に起きだしても頭がはっきりしない。たぶん女性たちもそうであろうと思う。表を見たらほとんど土砂降りに近い雨。ひと昔前なら当然中止のところだが、今はドームの屋根つきなので、雨も嵐も関係ない。傘をさして吉祥寺駅に向かい、水道橋駅の構内に行ってみたら、3人とも無事いた。
チャトさんは、以前この近くの会社でOLをしていたのだと言い、だからこの界隈には詳しい。待ち合わせは水道橋の駅がよく、水道橋駅の改札はこれこれこうなっている、などと、大変詳しかった。
傘をさして4人で球場に向かい、入り口に着いたら、もう屋根があるから傘をたたみ、女性3人でじゃんけんをしてもらった。というのは4枚のティケットは並びではなく、2枚ずつ、広島側と巨人側とに別れている。双方ともに内野の悪くない席らしいが、巨人側の方が少しだけよいらしい。ぼくが巨人側のよい方の席を取らせてもらい、ぼくの横の1枚をじゃんけんしてもらったのだ。「あ、私いいよ、遠慮する」と最初は言っていたヤマダさんが勝ち、ぼくの隣りになった。まあ世の中、そうしたものである。
野球観戦は久しぶりであった。LAで行ったドジャーズ・スタジアムが最後だが、この時はローリングストーンズの公演で、野球ではなかった。指定座席を探して階段をくだれば、人工芝の緑が室内のカクテル光線に映え、目に飛び込んでくる。この鮮やかな色彩には、やはりなかなか感動させられる。
席につき、見廻すと、優勝が決まってしまっているのにもかかわらず、席はほぼ埋まり、人気が激下降と言われるプロ野球であり巨人だが、この日のドーム内を見る限りではそういったふうはなかった。雨にもかかわらず空席は見えず、まずまずの人気ぶりに感じられる。野球が下降というよりもこれが自然で、これまで人気が野球に1点集中しすぎていたということか。
隣りのヤマダさんは、野球観戦をしながらも、席が離れたチャトさんたちと、しきりに携帯でメイルのやりとりをしている。攻守がチェンジする間に、ユニフォームを着た女の子たちが出てきて、人工芝の上、観客席を向いて整列し、踊る。みんな計ったように同じくらいの身長、まったく同じ体型をしていて、いっせいに同じ動きをするそのショートスカートの姿が可愛い。とそんなことをヤマダさんと話していたら、早速チャトさんから携帯メイルが入り、「えいこさん、燃えるって言ってる」と言う。まあえいこさんはエアロビのインストラクターなので、そうなのであろう。
試合は、広島の小差リードで淡々と進み、投手戦の様相である。こういう時は、投手の球筋が見えるテレビの方がよい。球場に来ている時は、なんと言っても乱打戦が面白い。アメリカのある大統領が、球場では8対7の試合が一番面白いと言ったが、まあそんなものである。球場では、長島さんふうに、打て打てと言っているのがよい。
そうしたら、また携帯メイルがヤマダさんに入って、「もう巨人頑張ってよー」とある。確かにこれは、あまりにも元気がない。広島は、初登板の新人投手のはずだが、打線が湿っていて、なかなか外野まで球が飛ばない。2人は巨人ファン、原監督ファンらしい。しかしこんなことを広島側のスタンドで言っていて、大丈夫なのであろうかと心配になる。まあ勝っているから広島ファンも大丈夫であろうが。
ぼくの隣りのおじさんは、当然巨人のファンである。当初からずっとビールを買っては飲み続け、だいぶできあがっている。たまに攻撃時、「おいナンとかー、ホームラン打てーっ!」と横が驚くような大声を出すが、応援はそれだけ、内心あきらめているのか、隣りの女性に中東情勢と北朝鮮の類似性について、延々講義をしている。
それで思い出すが、以前にまだ屋根なしであった後楽園球場に来る機会が割とあった頃、1回の表から7回の裏くらいまで、ずっと通路にある立ち食い蕎麦屋で蕎麦を食べ、ビールを飲んでいる人がいて、驚いたことがある。そこからは、当然グラウンドなど見えない。いったい何しに来ているのであろうと思ったが、しかし訊けば、これこそがプロというものなのだそうだ。球場に来て、野球なんぞ見ているのはまだ甘い、トーシロの初心者なのだそうである。通路で蕎麦を食いながら、野球なんぞは持参のトランジスタ・ラジオ(古い)で聴くのが通というものらしい。
試合は、広島側は5投手で無失点リレー。先発の新人斉藤は、5回3安打で初登板初勝利をマークし、小刻みな継投策もうまく決まった。打線も、6回に新井の適時打で先制し、巨人は一打逆転のチャンスがずっと続いていたのにもかかわらず、明らかに原監督の投手起用が失敗、9回に森笠と倉の一発で広島が加点し、土壇場での巨人反撃の予兆はそれなりに高まりつつあったのに、相手の追加点であっさり霧消した。広島県出身者には悪くない試合であったが、巨人ファンには不完全燃焼の夜であったろう。巨人はこれで6連敗、広島戦には、2年連続負け越しが決まった。
球場外でまた合流し、今すぐ駅に行くと混んでいるからと思い、帰り道沿いのデニーズに入ってスパゲティ・セットを食べながら、4人で試合について話した。
観戦中は忘れていたが、壁面ガラスの表に、雨はまだ降っている。駅に向かう人々はみな傘をさし、ゆっくりと進む。しかし意外にもデニーズは、それほど混んではいなかった。
3人とも野球観戦は久しぶりということで、楽しんでいたふうだった。
 
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