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島田荘司のデジカメ日記
第27回
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12−1(金)ビヴァリー・センターに、クリスマスカードを買いに。
T橋さんより、緊急メイル来る。
季刊03・クリスマス特集号は、東京で必死になって頑張ったかいがあり、予定通り12月13日から15日に、日本全国の書店でいっせい発売という運びになった。しかしその前の9日に、横浜伊勢佐木町の有隣堂で、早売り即売会というものをやることになったという。ついてはここに駈けつけてくださった読者のため、筆者よりの特別プレゼントというものを付けたい。ロスアンジェルスでクリスマスカードを150枚ばかり買い、これに手書きで「Merry Christmas!」の文字と、島田荘司のサインをして、至急フェデラル便で原書房宛てに送ってくれということだった。
東京でカードを買って送ってもいいが、そうしていてはもう間に合わないということ、それにカードはアメリカの方が本場なので、アメリカ製の方がもらったみなさんも嬉しいだろうという。それはそうだと完全に納得し、さっそく翌日、ビヴァリーヒルズはラ・シェネガ・ブールヴァード沿いにあるビウァリーセンターのカード屋に、クリスマスカードを買いにいった。
こういう作業は喜びである。早売り即売会ともなれば、言われなくても何か読者プレゼントを考えたい。しかしそのような冒険などやって、はたして大丈夫なものであろうか。読者は来てくれるものなのか。やっていただくのは嬉しいけれども、聞けば打ったのはサイトの広告だけという。T橋氏も、N瀬若社長も、I毛編集者も、みなみなサンタの扮装や、ウサギのかぶりもの持参で伊勢佐木町に繰り込むと張りきっているそうだが、誰もやって来ず、寒空の下、サンタやウサギが閑古鳥とともに呆然と立ち尽くすのではと考えると、まったく気が気ではない。これは自分も帰って呼び込みをやろうかと、かなり本気で考えた。
ビヴァリーセンターはハリウッド地区の南西にあたり、スターたちの居住エリアのすぐ足もとにあたるせいか、入っているブティークのセンスもよく、ロデオ・ドライヴと並んで日本人の定番観光コースに入っている。やってきてみると、もう12月に入ったが、センター内はそれほどクリスマスの飾りつけがにぎにぎしいということはない。ジュイッシュもモスリムもいるお国柄だからだろうか。日本人があれほどクリスマスにうかれられるのは、結局は無宗教国家だからかもしれない。
センター内、目指す「パピルス」というカード屋に入ると、期待にたがわずずいぶんと種類があった。アメリカは確かにカード天国だが、それほどどこにでもカードが豊富にあるというわけではない。こちらは、いろいろな店のそれぞれがわが道を行っているので、クリスマスに入ったら、繁華街のどの店に入っても並んでいる商品は同じ、というようなことはない。こういう品が欲しいならあの店、とあたりをつけて出かける必要がある。
箱に入った10枚組のカードのセットをいくつも買う。パームトゥリー並木と、遠景のハリウッド・サインがうっすら雪化粧をしたイラストのカード。これは毎年見かける。今年もあったから人気商品なのだろう。それから御手洗攻略本の中で、ぼくが御手洗氏と乗ったサンタモニカの観覧車に、雪が降りかかっているカラー写真のカード。大勢のサンタクロースが、自転車に乗ってプレゼントの配達に出かけていく白黒写真。ニューヨーク、セントラル・パークの雪化粧。同じくニューヨークの古い橋に降りかかる雪の写真、などなどのカードを買った。
それから家に帰ってせっせと文字書き、サイン書きをしていたら、だんだんに手首がおかしくなった。最初はさらさらと書けるのだが、長くやっていると、単純作業だけに右手が書いている図形の意味が不明になってきて、手の動きが滞るようになる。しかしまあ、書き損じは一枚もなかった。
終わってから「百万人の伝言板」とかWS刊のBBSに、「カード書きで腱鞘炎になりそうでした」と冗談を書いたら、みんながそれは大変だ、暖めた方がいいとか、早くよくなってくださいとかレスを付けてくれ、いやあれは冗談でしたと言えなくなってしまった。しかし本当にありがたいことだ。
この前「プロジェクトX」というNHKの番組を見ていたら、パチスタ手術という革命的な心臓手術の外科医が、医者は退院していく患者の表情で力をもらうのだと語っていたが、これは本当にそうだろうと思う。今の立場になり、まったくもってよく解るようになった。作家もまた、喜んでもらえたという読者の反応から元気をもらうのだ。それがなければ、もうとっくに力つきている。ぼくは単純だから、上手に読者に励まされ続ければ、死ぬ前日まで調子に乗って書いているであろう。いや、死ぬこともうっかり忘れてしまうかもしれない。
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