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島田荘司のデジカメ日記
第24回
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11−12(日)、波に揺られてオフ会。
11日12日と、横浜でオフ会をやる。オフ会についてはおいおいに書いていこうと思うが、集まってくれた人の顔や名前を出して不都合があってもいけないので、今回は内容は書かないでおきたい。とても気持ちのよい人たちで、こんなにいい気分にさせてもらっていいものか、すぐに揺り戻しがくるのではないかと不安になる。これは日本人だからか、それとも今までさんざんにひどい目に遭ってきたせいか。
嫌な人たち、威圧の声が大きい人たちの方が目立つ。しかしそういう人たちの絶対数は、実は少ないのだ。SSKの人たちに会っているとそれが実感される。日本社会は、実のところ、こういう善意の人たちで構成されている。威圧が生きる上での必要悪だなどとは、この人たちには絶対に思ってもらいたくない。ともかく、この人たちを裏切りたくないし、この先どんなお返しができるものか、そういうことをずっと考えていた。
地方から来た女子高生の人たちもいて、今夜泊まるところがないから、これから深夜バスで帰るという。できることならバス停まで送ってあげたいし、バス代も出してあげたい。会ってわずかばかり話して、握手をするだけではなくて、もっと何かできることはないかと思う。暗い中、それだけの苦労をしてもらう価値がはたして自分にあるものか、しばし考え込んでしまった。ともかく俗にはならず、命がある限り、作家としてできる限りのことはしようと思う。
翌日、大桟橋に向かって歩いていたら、ターミナルの前に制服の男性が出てきて、今から湾内一周の船が出るという。10人以上だと割引になるそうだ。急遽みんなにはかって乗ることにする。
その昔、マリンタワーの中に「バードピア」という雄大な鳥のスペースがあった頃、それはまさに「異邦の騎士」の時代だが、あれは山下公園側からだった、湾内一周の船に乗ったことがある。ごく小さな船で、沖に出ると、白くて半透明なクラゲがいっぱいいた。
そういえば、今はもうマリンタワーに「バードピア」はなくなった。吉祥寺の近鉄デパートにもガラス張りの大きな小鳥のスペースがあって、これを眺めながら中華ランチを食べるのが好きだったことがあるが、あれもなくなった。鳥小屋は糞の清掃でみなねを上げ、次々に消滅してしまう。
船からの眺めもまた、当時とはまるきり変わっていた。雄大なベイブリッジを、下から眺めながら通過する。沖にクラゲの姿は見つからない。当時とはもう船も全然違う。大型で速度も早いし、アウトサイドのベンチにかけて潮風に吹かれると、海面からの高さもある。だから、あるいはいたのかもしれない。
集まってくれた人たちと、船上で少しミステリーの話をする。ゆるやかに旋回し、船が帰路につくと、陽は徐々に傾いていき、みなとみらいのビル群に向かって落ちていく。幕末、異国人たちの居留地だった関内島は、その左に、平たい大きな板のようになって見える。ニューヨーク、マンハッタン島もそうだが、水辺の土地は、どこもみな水に浮いた薄いセルロイド板のようだ。埋め立てて作るか、隆起部分を削って平たくするからだろう。海面が数メートルも上昇すれば、ヴェネツィアの広場のように、どこもすっかり水に没してしまう。
陸にあがり、みんなで歩いて山下公園に行く。氷川丸そばの海辺に、今日はカモメの大群がいた。陸の上では鳩、水の上ではカモメが乱舞する。境目では両者が入り交じる。しかしカモメと鳩とでは、F1マシンと市販のワゴン車くらいに重量が違って見える。カモメは軽々と空を滑り、鳩は懸命に羽ばたいて浮上する。じっと見較べていれば、これは飽きない眺めだ。
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