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島田荘司のデジカメ日記
第168回
島田荘司のデジカメ日記
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5−28(水)、島田荘司全集の装丁見本届く。
南雲堂を通じて、装丁家の戸田ツトムさんに依頼していた装丁の第1便が届いた。これはまったく期待通りの見事なできだった。ぼくは戸田ツトムさん、菊池信義さんの装丁では、修正を言ったことは1度もない。
安藤忠雄さんの個展からインスピレーションを得た考え方だが、これは戸田さんの感性にぴたりだと思っていた。以前に彼がやってくれた、「眩暈」の方法やセンスの延長上だと予感したからだ。そしてまったくその通りのものが届いた。
「眩暈」は、四六ハードの本を、二つ折りにしたトレーシングペイパーで巻き、このトレペにも線を印刷したものだ。2枚のトレペ、そして本の表紙。もしもトレペが片面印刷なら、トレペは半透明なので、都合3枚のグラフィックが重なって見えることになる。これも画期的な考え方だったが、今回は、ハコをトレペふうの半透明な材料を使って作ろうというものだった。
このハコ用の紙は、平和紙業という会社が、新たに開発してくれるという。見本はまだ試作なので、紙が柔らかく、少々頼りないような印象だ。ぼくは、日本製のVHSのカセット・テープに、トレペふうの半透明グレーのハードケースがあると思っていたのだが、紙の会社が新たにハコ用の材料を開発するという。そうするメリットが、何かあるのだろう。
送られてきた見本は、3点から成っていた。半透明な紙で作られたハコに、これも以前に戸田さんがやってくれた「秋好英明との書簡集」の、カヴァー紙をとった裸の本がおさまったもの。それからデザイン案が、A、B、と2案付いていた。これのどちらかを選んで欲しいということだ。
A案、B案は、双方ともに、白紙のデザインの上にトレペがかかっている。このトレペには(1)と(3)と数字がふられていて、(1)が「ハコ」、(3)が「見た目」とある。(2)はケント紙で、これには「カヴァー」とある。(2)の上に(1)をかけて感じを見る。これが半透明なハコに本がおさまった状態。この時の見え方が(3)ということだ。
A案は、機械の製図のような細かな線によるデザインがケント紙(2)にあり、これに、これもアミかけの長方形スペースとか、著者名が印刷されたトレペ(1)を重ねて見る。ぼくが意図していたのはこちらだった。
B案は、砲弾を受けて破壊されたボスニアの民家の壁を(2)に使って、この上に線や文字の印刷されたトレペ(1)を重ねる。ボスニアの壊れた壁が印刷された本が、半透明なハコに入っているというものだ。
どちらも捨てがたいが、この時、南雲堂に質問や感想を書いて送ったメイルがあるので、これの必要部分を下に貼ることにしよう。デザインが立体的だし、また戸田さんもこの段階では、こんな感じというだけで、細かいところまで完成しているわけではないから、少々解りにくい箇所が出ている。その質問をした。
質問は細かく、多岐にわたって解りにくいので、主要なものだけを選んでお見せする。

フェデラル便にて、戸田さんの装丁見本、受け取りました。
大変素晴らしい作品で、こちらが期待していた通りのものであり、また水準でした。戸田さんにはよくよくお礼をお伝えください。
まずA案、B案の選択に関してですが、昨晩一晩じっくりと考えました。むろん、こちらがしっかりとイメージを持っておりましたので、一見してすぐにこちらだ、と思った方はあるのですが、それで後悔はないかと、一晩考えたわけです。
結論から言いますと、やはりここはA案であろうと思います。もちろんB案も素晴らしいものであり、捨てがたいのですが、これだけしっかりとした絵柄があると、この先10冊、20冊と同じ絵柄の本が出て行くという際、どれほど立派なものであっても、見飽きるということは起きそうです。ここは抽象的、概念アート的な核を抽出し、これを繰り返し使っていくという考え方が筋であろうと考えます。戸田さん独特の製図的な線は、本格ミステリーの全体構成、また純粋思考をよく象徴すると思います。

で、以下A案デザインに関してですが、デザイン、文字レイアウト、ともに見事なものであり、戸田さんの経験と熟練を感じさせる立派な仕事です。ですから、ヴィジュアルに関しては何も言うことはありません。すべてに賛成です。ただ、質問がいくつかあります。

★、まず材料の紙質とか色合いは、「出来上がりの感じです」としてつけられている「秋好英明との書簡集」+半透明のハコ、の感じでしょうか。中身の本自体の表紙色は、このような白っぽいグレー、ということですね。そしてマル背でなく、角背であると。賛成です。

★、ハコですが、実際もこの材料でしょうか。見本ではちょっと柔らかすぎ、弱い印象はありますね。もうすこしハードでしっかりとした、ハコ用のプラスティック素材はないものでしょうか。

★、ハコがこの柔らかさとしたらですが、引き出す際に指をかける「切りかき」部分が必要のように感じます。

以下は、トレペかけの(1)、(2)、(3)の説明に関してです。
★、トレペ(1)がハコ用のデザインですね。ということは、この「島田荘司全集」とか「1」の文字は、半透明なハコ自体の背に印刷されるのですか? それとも(1)に見える背の位置の文字は、中の本の背に印刷されたものが、たまたま見えている「見た目」の状態、ということでしょうか? すなわち、ハコ自体にも文字は印刷されますか? それともハコには文字は印刷されないのでしょうか?

★、というのは、表一部分に書籍タイトルと著者名が入るらしい縦四角のスペースが見えます。ここが表一なら、「島田荘司全集1」とある(1)の背中部分は、ハコの場合は本挿入用の穴の位置になります。表一タイトルは、中の本の表一のみに印刷されるものですか? それともハコ自体にも印刷されますか?

★、ハコの表一と表四に、アミカケの長方形のスペースがあります。これはこの説明の通りに、ハコのみにこのような印刷がなされるのでしょうか?

★、たぶんハコにはアミカケと、背中の文字だけなのであろうと推察します。ということは、(1)のハコのデザインを示したトレペは、これだけは反対向きということですね?

★、「カバー用のデザイン」とあるのは、中身の本に、PPのカバー紙が巻かれるという意味ではないですよね? バーコードか表四右下になっています。しかも逆さになっていますが、実際の位置もここですか? 

★、3枚目の「見た目」で、横位置長方形のアミカケ・スペースに濃淡がついたり、背中のゴシック文字にも濃淡がついています。これはまた、どのようにしてこういう効果を演出するのでしょうか。これは中の本のカバーにも、L字型のアミ・スペースを用意しておくという考え方でしょうか。すると背中の文字だけは、物理的に濃淡演出は不可能に思えますが。この背中はハコの背? それとも中身の本の背でしょうか。
それともこれは、ハコに、中身の本を反対向きに入れた際に現れる効果、ということでしょうか。すると、ハコの背は、普段は「島  司全集」というふうに見えている、ということでしょうか。

★、印刷は、ハコ、中身の本ともに、「スミ」一色のみというふうに理解してよいですか?

★、B案ですが、この見事なデザインを葬るのはあまりにもったいないですね。そこでこれは提案ですが、できたらこれもキープしておいてもらい、将来、小説以外の原稿をまとめる全集(号外)を出せるとなった際に使う、という計画にしておいてはどうでしょうか。むろん無理となったらそれは仕方ないですから、その時にこれは葬るという運びになります。
むろんこれはさらに小部数となり、売れないとは考えられますが、それでも綾辻行人氏との対談、笠井潔さんとの対談、錦織淳さんとの対談、「本格ミステリー宣言1、2」、それに今回の「21世紀本格宣言」、さらには「異邦人の夢」、近く出すエッセー集など、後世の研究者にとっては資料になるべきもの、あるいは商品となりそうなものも多くあります。
また私の解説を付け、物議をかもした「パロサイ1、2」とか、サイズを縮小した漫画を入れてもよいのではないでしょうか。今やっている共著作品もありますしね。ともかく、将来に何が起こるか解りませんので、この考え方もキープしておいてはいただけないでしょうか。もっとも装丁B案のキープは、これは戸田さんがOKして下さった場合ですが。

とにかく、全集の製作が始まった。画期的なデザインの本になりそうだ。
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