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編集室の窓から
島田荘司のデジカメ日記
第166回
島田荘司のデジカメ日記
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島田荘司のデジカメ日記
4−19(土)、ケーブルTV出演。
かねてより言われていた、ケーブルTV、ミステリー・チャンネルのザ・インタヴューに出演した。15分ずつ4つのユニットに区切るのだが、4つを一挙にオンエアすることもあるという。しかし、15分番組として1本ずつ流すこともするから、収録は15分ずつ区切って行う。どのみちすぐ日本を離れてしまうし、自分では観ることはないので、こちらはなんとなく気楽な気分である。
本当は書斎がよいらしいのだが、もうほとんどの機能はアメリカに移してしまったし、東京の仕事場は書斎という感じがしない。そこで、池袋にある光文社のミステリー文学資料館を借りて、収録させてもらうことにした。
応接間か、地下の書庫あたりがいいかと考えていたのだが、A井さんに案内されて行ってみると、1階のメイン・ホールにすでにカメラがセットされ、準備が終わっていた。
おなぎ教授はすぐにやってきてくださって、ぼくがカメラの正面、先生はカメラから見ると左側の椅子にすわった。ピン・マイクを胸に付けられ、スタート。最初の15分は「作家への道」というテーマ。福山市で弟とビートルズに熱中していた頃のこと、「占星術殺人事件」のトリックを思いついた時のこと、などなどを、思い出すままに話した。話しはじめるとあれもこれも、ついでにあのことも話さないと後の意味が通じないだろうとなって、15分の時間ワクを大幅にオーバー、これはかなり編集が大変であろうと思う。
次の15分は、「御手洗潔と吉敷竹史」。これもかなりの長話になった。この日も竹内女史が来てくれていたのだが、吉敷には竹内さんの男性の好みが大幅に入っている、とか、まだ彼女から、通子と一緒に暮らさせてよい許可が降りない、などと言いたい放題を言ったから、後ろでずいぶんはらはらしていたらしく、これも予定時間の倍以上喋ってカメラがオフになったら、私は読者に怒られますよと言っていた。
次は「ミステリーとは何か」。これはちょうど新本格の現状を考えていたので、過激になったり、批判にとられないようにと慎重を心がけながら、コード了解を通過したことによる特有の意識が、名探偵をゲーム記号化し、背景や人生を描かせないことが起こっていて、多くの作品が金属的に冷えはじめ、一部は破壊的にさえなっている。こういう作品群もあるのはとてもよいことだが、流行が一方に傾きすぎると、将来に向けての不安定要素である。もともと探偵小説は、ドイル、クリスティを見ても、わが乱歩、横溝、高木、鮎川作品を見わたしても、文芸作品としても読める体温を持っていた。今日本の探偵小説は、性格がすっかり変わリはじめているから、バランスを取るため、一部主力は作品の体温を再び取り戻してもよい思っている、といった話をした。また例によって物議をかもすかもしれないが、これは必要なことだ。これがまた、大幅に時間をオーバーした。
最後が「LAから見た日本」といった方向のもの。これなどは、時間の3倍は楽に話したのではないか。ぼくはどうも、無口ともいえるところがあるのに、テーマによっては話しだしたら停まらない。まあ全然話さなかったら相手も困るであろうから、これでいいのかとも思うが、今からこれを編集するのはさぞ大変であろうと思う。終ったら、声が出ないのではないかと思うほど、喉がからからになっていた。
おなぎ先生は、最初のひと言ふた言、きっかけの口火を切ってくださるだけで、後はひたすら、ぼくが話すのを横で聞いていただけであった。これではわざわざおなぎ先生にいらしていただくほどのこともなかったのではと思い、非常に恐縮した。

収録が終り、おなぎ先生とA井さん、竹内女史などで中野に出、光文社が昔からよく使うというさかな料理の店で乾杯した。おなぎ先生はジョッキを一杯やると、もうそれ以上は決して飲もうとせず、理由を訊くと、どこに学生の目があるか解らない、酔ったところをみなの目に晒すわけにはいきませんからと言った。A井さんは黙って聞いていたが、彼がもし日大の教授であったなら、いったいどのようなことになるのであろうか。
おなぎ先生は、学生に見せるので、色紙を書いて欲しいとぼくに言い、書いたら大事そうにそれをカバンにしまいながら、今度うちでもミステリ研を作ろうかという話が出ているんですよ、と言った。そうしたら顧問になってもらえますか、と問われる。日大は、もよりの駅はどこですかと訊いたら、御茶ノ水で、駅からは徒歩5分だという。そういうことなら、できないことではないと思う。ミステリ研ができて、常任の顧問がおなぎ先生だと、まるで里美の環境と同じになってしまう。なんだか面白いことだ。
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