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編集室の窓から
島田荘司のデジカメ日記
第143回
島田荘司のデジカメ日記
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11−26(火)、「最後のディナー」と、SSKミーティング。
角川文庫に収録する「最後のディナー」の、多田さんの装丁デザインがあがってきた。駅前のルノアールに、角川書店のA立さんが届けてくれた。
以前にも書いたが、1回目のラフが充分でなかったもので、これは大変に心配していた。もう期日も迫っている。この本の刊行は、わずか1ヶ月後のクリスマスともう決定しているのだ。だから今日、こちらがOKを出してもぎりぎりのスケジュールである。もう直しを要求する時間はない。ということは、今日見せてもらうデザインによいものがなければ、相当悲惨な展開になるということだ。こちらはかなり緊張していたが、いざラフを見せてもらって、これがまったくの杞憂であったことを知ってほっとした。
作品は、実に見事なものであった。ラフは数点用意されてあり、木箱に入ったワイン・ボトル、赤い炎、白い炎、そして丸くて平らな石に試験管が埋まっており、このガラスの筒の中にスプーンが1本入っているという概念アートふうのCG、そういう4点であった。
ワイン・ボトルにも心ひかれたが、石の中のガラス管とスプーンに大変魅力を感じたので、即決でこれを選んだ。読者からは、「最後のディナー」とどういう関係がある、と苦情を言われるかもしれない。詳しくはネタばれになるので語れないが、文学的には、ガラス管の中のスプーンが、薬品をすくうもの、とでも言っておきたい。
そういった説明的な言葉ではなく、それらを超越して、このCGの内包する物語が気に入った。ぼくの書いた小説世界と、すっかり重ならなくてもぼくは気にならない。アートとしての独立した力に感心した。そしてこれが、小説世界と一定量の関連を持っていればそれでいい。それがぼくの考え方である。
4点の作品は、装丁家の多田さんの作ではなく、高橋善丸という人のCG作家の作品だった。2人の合作というこのスタイルは、光文社文庫、吉敷シリーズの装丁と同じ行き方である。あの時は、黒田武志という作家の作品だった。すなわち多田さんは、書籍の装丁にジャスト・フィットする作品を発見したり、引き出したりする、プロデューサーとしての手腕があるらしい。そしてこれを美しく見せる構成者としての腕もある。
ともかくほっとした。この装丁なら何ひとつ文句はない。とてもよいできである。これで「最後のディナー」の最終形態も、うまくまとまった。大変満足である。A立氏も、満足してくれているようだった。

それから自宅のバーに、007氏、Matthew氏、桜子さんにPattyさんで集まり、SSKのミーティングをした。007氏が、怪しい中国系アメリカ人のようなオールバックで現れたから、みな度肝を抜かれ、しばし絶句した。中東世界にミサイルの燃料でも売りつけそうなこの危険な外観は、アメリカの黒社会にはけっこういる。ぼくのLAの知り合いにも、これは安全まともな人物だが、実際にこんな顔をした韓国系アメリカ人がいる。007氏は英会話のスクールに通いつづけてもう5〜6年になるから、外観もすっかり外人になったらしい。
で、もうかなりしゃべれるようになりましたかと訊いたら、「いや全然です」と胸を張って言っていた。今でも会社にアメリカから電話がかかったりすると、「間違い電話です」と言って切っちゃうそうである。以前しどろもどろで対話した苦い体験から、これは学んだ対処だそうだ。しかし石岡先生とは違い、彼の場合は毎日学校に行くことが楽しいという。可愛い女の子が多いからだそうだ。だから1日も休まない。それから白人女性の先生が、彼が教室に来るのを楽しみにしているらしい。いつも彼が、英語の質問にとぼけた答を言うからだそうだ。どんなことを言っているのか、1度聞いてみたいものである。
Matthew氏も007号も、仕事が殺人的に忙しく、眠るひまがないという。007号は、これに加えて、会社ではサポート・センター状態らしく、ノイローゼ気味らしい。Matthew氏は、ここ何ヶ月、時間を見つけてはWS刊の新扉を作っているのだが、Flash制作で頭がごちゃごちやになり、今会社もてんてこまいなので、これではとても作れない、材料のデータを送るから、後はそっちが作ってよ、とここでもサポート・センター状態になっていた。007号は、いいけどごちゃごちゃになったデータは送らないでよ、と言っていた。
それから、Pattyさんが作ってタッパーに入れてきてくれた料理を食べながら、みなで《島田ワールド・007号クイズ》というものを作った。Pattyさんは、家庭料理が実に上手なのである。ちょっと変わった発想の、あまり見たことのない食べ物を作る。餃子の皮に納豆を入れて爪楊枝で留め、これをからりと揚げたものとか、酢であえたいろんなものとか、とてもよい感じである。みな感心して食べた。
クイズは、以前にRoomS地下のRoom7で、鷹取中学の生徒に向けた秘密クイズをやったが、これがけっこう好評だったので、今度はSSKメンバーに向けて出題し、Pattyさんのサイン入り翻訳本が当たるというのをやろうということに話がまとまった。そこでこの日、桜子さんも入れてクイズを作った。
Pattyさんのサインはもう終了しているし、この夜、すいぶん遅くまでかかって設問と回答はできたのだが、それを各サイトに配置したり、回答用紙を作ったりする時間が全然ないから、決行はいつのことになるやら解らないと007氏は言っていた。まあできることなら早くやりたいものである。
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