島田荘司 on line
on line top Weekly Shimada Soji top
編集室の窓から
島田荘司のデジカメ日記
第108回
島田荘司のデジカメ日記
1−27(日)、東大、A先生のヒヤリング。
1月17日、岩波先生より、以下のような報告が入った。東大はDNA鑑定をやっていず、外注のかたちになるということから、東大以外の鑑定の先生をあたってもらったのだ。そしてこの先生は、検察寄りの仕事でなく、弁護士寄りの仕事を引き受けてくれる、つまりは過去そういう仕事をした経験を持つ人であることが望ましかった。奇妙なことだが、鑑定の先生はたいていニュートラルな立場にはいず、検察寄りか弁護士寄り、どちらかに属しているものらしかった。そして弁護士寄りの鑑定医は、どうやら絶対数が少ないらしく、というより、数えるほどしかいないらしい。ということはつまり、冤罪事件の鑑定は、みんな同じ先生に集中するということにもなる。そういったことを、われわれは徐々に学んでいた。

堀先生
昨年の12月の末に、私の先輩であるS大の精神科のB先生を通じて、S大の法医学教室のC教授に秋好事件のことについて、コンタクトをとってもらいました。本日返事をもらえたのですが、C先生のお話では、まずN大の教授にお願いしてみたらどうかということでした。かなりの確率で、鑑定を引き受けてもらえるのではないかというお話でした。私の手元の名簿では、連絡先は以下のようになっています。
N大学法医学教室教授、O先生。電話、(****)****。
細かい点は1/27にお話できればと思いますが、皆さんのご意見をおきかせください。
岩波明

そこで、ぼくが意見を書いた。

島田荘司です。
毎晩サーヴァがダウンするのでまいっています。翌朝になると、たぶんワーカーが出社するので、つながるということの繰り返しです。
岩波先生、ありがとうごさいました。O先生、よいと思います。私としては異存はありません。弁護士の各先生方は、どのようにお考えでしょうか。

26日、安部弁護士が意見を寄せてくれた。

安部尚志です。島田先生からのメールいただきました。
昨年末から、2000年以降九州では7番目の大型倒産(全国的にみれば大したことはないのでしょうが)と報道された会社の民事再生事件を手がけており、秋好事件の方はなかなか議論について行けず、申し訳ありません(中略)。
ところで下記の件については、私も異存はありません。むしろ、現在の第1次再審手続は予断を許さない状況にあると思われますので、早急に協力して下さる専門家を確保して、意見書を作成していただく必要があるのではないかと考えます。後ろ向きの発想と批判されるかもしれませんが、現在の第1次再審はあまり期待できないので、第1次再審が最高裁で棄却されることを見通して、すぐに第2次再審を申立てる準備をしておいた方がよいのではないかと考えています。いかがでしょうか。島田先生、堀先生。

そして1月27日が来た。まず岩波先生より、報告のメイルがCCで入った。

島田先生
本日、東大の法医学教室で、堀先生とともにA先生と面談しました。堀先生は遠路九州からおいでになったのですが、証拠のカッターシャツと現場写真のファイルをおさめたパソコンを持参くださいました。堀先生、ご苦労さまでした。
詳細は堀先生がお話しされると思いますが、多少希望がみえてきた感じです。今回証拠のシャツをみてもらい、A先生も大きな矛盾点があるということに賛成してもらえました。具体的な問題点について話し合った後、O先生へのアプローチの仕方についても相談しました。A先生のお話では、他の大学に相談したことは言わない方がいいのではないかという話でしたので、そういった形で接触してもらうようになると思います。
以上、とりあえずご報告します。
岩波明

そこで、やはりCCで、以下のような返事を書いた。

島田荘司です。
岩波先生、ありがとうごさいました。ごくわずかでも希望が見えたのは、これはひとえに岩波先生のお力添えのゆえと、大変感謝しています。
堀先生も、御疲れ様でした。A先生は、見方が公平で、素晴らしい人格の方と御見受けします。是非御話し合いの概略だけでも、お伝え願えませんでしょうか。
安部先生、民事再生事件の方、是非頑張ってください。私はその件は存じ上げませんが、今日本で、毎日80人ずつの自殺が、3年間続いていることが大変気になっています。かつて年間1万人が交通事故死していた時には、「スピード狂の若者は許せない、これはもう『交通戦争』だ、戦死者撲滅!」とあんなに盛り上がったのに、今この自殺者数撲滅の声は全然聞こえてきません。みんな不況のせいにして、当然と思っています。この前、日系アメリカ人の家の食卓でこの話をしたら、この数字にはパニックになりましたね。どこの国でもそうなります。ついでに言うと、日本の交通事故死者1万人は、今も微動もしていません。
安部先生のおっしゃるように、2次請求開始時点を視野に入れての活動は、必要なことですね。2次に全力をというのは現実的な判断です。しかし確かに、1次の現時点も予断を許さないところがあり、早急な対応が必要ですね。ゆえに、いっそすべてを2次にという判断も、私にはちょっとできかねるところがあります。この点についての先生方のご意見も、お聞かせ願えればと思うところです。

同日、間もなく堀弁護士より、ヒヤリングの内容の報告があがった。

島田先生 安部先生 高橋先生 岩波先生
堀です。今日、岩波先生にご同席いただいて、東大法医学のA先生にお会いしてきました。
すでに昨年末に岩波先生から概要は聞いていただいていましたので、実況見分調書の写真とカッターシャツの現物を見ていただきながら、ご意見をお伺いしました。嬉しいことに、血痕の付き方はかなり問題で、N大のO先生に鑑定をお願いすることは意味があるというご指摘をうけました。ポイントは次の3点だったと思います。

1、両袖の大量血は、犯行態様からは説明がつきにくい。想定するとしたら、現場でころんだというような状況。しかし、それも1階6畳間の死体と、流出した血液の状態からすると、不自然な気もする。したがって、獣血が混じっていないか、DNA鑑定で4人の被害者以外の血液が混在していないかなどを調べることには、それなりに意味がある。
2、飛沫痕が少ないのはやはり奇異に感じる。ただし、実況見分調書1階6畳間の死体周辺には血液が飛び散っていないので、A型、B型の飛沫痕は、いずれにしても少ないだろう。しかし、逆に2階の現場は相当広範囲に血液が飛び散っている。したがって、AB型の飛沫痕が少ないのは明らかに不自然。飛沫痕について、それと思われるものについて全部血液型を明確にして、現場の状況(畳や壁などの飛沫痕)や、犯行態様、傷害の部位・程度との比較検討を行うことは意味がある。
3、背面の大量血は、やはり説明がつかない。血痕の状況からして、富江の作業着からの転写というよりは、両袖の血痕と同種の付着状況。このような形で血痕が付着しているのは奇異に思う。

その他のポイントは、次のとおりです。
1、O先生は、これまで弁護側で鑑定をした経験が多いということでした。依頼の仕方については、いろいろ難しい状況があるようなので、弁護団からダイレクトに依頼することを考えようということになりました。O先生の担当された事件が分かれば、依頼のきっかけになるのですが。
2、鑑定費用については、鑑定事項によるが、高額になる可能性もあるということでした。まず、鑑定事項と目的をはっきりさせたうえで、鑑定を依頼する必要があると感じました。
岩波先生、今日はどうもありがとうございました。何か補足していただける点がございましたら、よろしくお願いいたします。

続いて岩波さんから、O先生に関する情報が入った

堀先生、日曜日はお疲れのところ、ご苦労さまでした。今度に少しででも役にたったのであればと思っています。
ご存知かもしれませんが、インターネット上でO先生の情報がありましたので、お知らせしておきます。袴田巌さんの再審の鑑定を行ったということです。袴田さんに関するホームページに、以下の記載がありました。
「1995/07/17 日弁連弁護団は、東京高裁の抗告審に対し、浜田寿美男花園大教授による自白に関する鑑定補充書と、クリ小刀に関するN大O教授の第二鑑定書を提出」
今後ともよろしくお願いします。
岩波明

(今回は写真掲載はございません)
デジカメ日記 バックナンバー

Copyright 2000 Hara Shobo All Rights Reserved