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島田荘司のデジカメ日記
第104回
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島田荘司のデジカメ日記
徳間書店『問題小説』より
12−21(金)、2001年、「秋好事件」の師走、3。
12月18日、岩波さんからの返信。

堀先生、CC:島田先生。
今後の進め方ですが、先生から資料を送ってもらい、まず私がパーソナルに法医学の先生にお聞きするのがよいのか、それとも先生も同席なさった方がよいか、ご検討ください。私の知人の先生は、非公式ということであれば、詳しい相談にものってくださると思います。
もし私がまず聞いてみるということであれば、お願いした以下の資料を、私の自宅までご送付ください。その場合、できれば年内に時間をとって行いたいので、速達でお願いできないでしょうか。

「秋好事件」に掲載されている図より詳細な、血液の付着状況の図。
カッターシャツなどの実物の写真(できれば大きいもの)。
血液鑑定の際の図。
死体解剖の際の鑑定書。
作業着に関する資料。

堀先生。
さきほどの追加です。島田先生のメールの秋好さんの手紙にある「実況見分調書」の写真というものは、手に入るのでしょうか。もし可能であれば、これもご送付いただければ幸いです。
岩波。

同日の、堀弁護士よりの返信。

岩波先生、CC:島田様 安部先生、高橋先生。
弁護士の堀です。島田さんの追加については、わたしも賛成です。是非お願いします。
鑑定をお引き受けいただけるとしたら、鑑定書提出後の法廷での証言も含めて、お願いすることになるかと思います。ただ、正式にお願いする際には、弁護団から詳しく説明させていただいた方がいいかと思います。
>
>今後の進め方ですが、先生からから資料を送ってもらい、まず私がパーソナルに法医
>学の先生にお聞きするのがよいのか、それとも先生も同席なさった方がよいか検討く
>ださい。
>私の知人の先生は、非公式ということであれば、詳しい相談にものってくださると思
>います。

弁護団の日程調整はかなり難しく、まず岩波先生に、概要を聞いていただければ助かります。
>
>もし私がまず聞いてみるということであれば、お願いした以下の資料を私の自宅まで
>ご送付ください。その場合、できれば年内に時間を行いたいので、速達でお願いでき
>ないでしょうか。
>
>「秋好事件」に掲載されている図より詳細な、血液の付着状況の図。
>カッターシャツなどの実物の写真(できれば大きいもの)。
>血液鑑定の際の図。
>死体解剖の際の鑑定書。
>作業着に関する資料。

わかりました。明日まで事務所の外での仕事ですので、帰り次第速達でお送りします。実況見分調書の写真は、それを更にデジカメで撮影したものがあります。

同日の岩波先生の返信。

堀先生、CC:島田先生。
了解しました。それでは私の方で可能な限りやってみます。島田先生の疑問も訊いてみます。資料を郵送、お手数ですがお願いします。
岩波明。

12月21日、堀弁護士が資料を岩波先生に送った。

岩波先生。
弁護士の堀です。大変お世話になります。資料は本日、書留速達でご自宅へ送付させていただきます。出先から事務員を指示してのことなので、抜けているものがあるかもしれませんが、お送りするのは次の資料です。

1、衣服の血痕に関する、血液型鑑定の添付図。
2、被害者の死体解剖の結果に関する鑑定書。被害者の名前は消しています。代わりに、姉婿、姉、母、姪、というように表記しました。
3、衣服と凶器の写真。
4、実況見分調書添付写真のうち、台所に慰留されたカッターシャツが撮影されているもの(3の写真と袖の血痕の状況が異なります。また。それぞれの写真の状況が違っていることを図示しています)。

作業着の材質については、事務所に帰るのが日曜日になりますので、あらためてメールでお知らせします。なお資料に関しましては、お取り扱いにくれぐれもご注意いただきますよう、お願い申し上げます。

これに対する岩波さんの返信。

堀先生、CC:島田先生
承知しました。それでは、来週東大の法医学の先生に時間をとってもらうよう、交渉してみます。 先に連絡した信州大の件はすすめた方がよろしいでしょうか。また信州大の教授が相談にのってもらえそうな場合、先生方は出張は可能でしょうか。ご検討ください。
岩波明。

同日にぼくの方もこのようなメイルを書いて、CCで廻した。

島田荘司です。
岩波先生、みなさん。いろいろとありがとうございます。岩波先生なら、お立場上、法医学の先生を、新たに、いくらでも見つけられるのでは、と期待しております。どうぞよろしく、お願いいたします。
袖口の大量血というものは、優先順位の2番目と私は考えています。一応心得ておいていただきたく思ったので、前便にしたためました。
もしこれが警察の作為とすれば、袖口の血はいったい誰のものになるのか、推察が難しいところです。以下でまた少しだけ、これについて考えを述べてみます。
1階で秋好氏は、努氏、広子氏の殺害には関わっていない、2階のエミ子氏は殺したが、これは『掛け蒲団越し』、続く福美氏殺害には関わっていない。とすると、袖口の大量血の付着は、いささか不可解です。これでは誰の血もほとんど付かないという話になります。少なくとも、これほど大量にはつきませんね。
では警察が捏造したか。もしそうなら、これは1日程度の時間が経過してのちの決心、と考える方が自然です。何故なら、現場に入った当時警察は、秋好英明が単独犯と考えて、格別疑っていなかったと思われます。それが、富江の態度、証拠の状況等を見るにつれ、ひょっとして富江が共犯ではないかと警察は疑いはじめ、これをかばってやろうと考えて、秋好単独説を補強するために証拠の捏造をした――、捏造ならそういう話になるでしょうか。するとこれは、1日程度はのちの着想と考えられます。そうでなくても、最低数時間はのちでしょう。
ところがそうなると、この決心の時点では、現場の血はもう凝固してしまっているのです。袖口をとっぷりと漬ける被害者の血は、どこにも存在しません。
実際、写真の様子の変化(シャツの置かれ方、勝手口たたきに置かれた履物の位置等)は、当日と、そしてその翌日の撮影というような、時間的経過があるように見えます。そうなら、シャツをとっぷりと血に浸けたのも翌日という話になり、するとこの血は、いったいどこから持ってきたのでしょう。
もし現場の血を用いて警察が証拠を捏造したのなら、つまり現場の血だまりに、被告のシャツの袖口を警官がひたしたのであるなら、この決心は現場に踏み込むと同時であっても遅いくらいです。血は8分で凝固を始めますし、警察の現場到着は、早くても殺害から30分程度のちでしょう。となると、この線はまずないと考えるべきです。
するとどういうことか。もしも捏造であるならば、同じ血液型の別人の血を用意し、どこか別所で、これに被告のシャツ袖口をひたしたという話になります。捏造とすれば、それ以外には考えられないわけです。
とすれば、DNA鑑定をやれば、簡単に結果が出るという話になります。まあこれ、やってみる価値はありますね。ではまた。
島田荘司。

するとすぐに岩波さんからメイルが来た。

島田先生。
岩波です。鑑定の件、承知しました。島田先生のご意見、たいへん面白く読みました。もしでっちあげであれば、大変なことになりますね。小説のような話です。
鑑定を引き受けてくれる先生について、自分なりにいろいろ聞いているのですが、なかなかすぐには難しいです。まず堀先生から資料が届きましたら、できるだけ今年のうちに東大の法医学教室の先生の意見を聞いてみます。
次は信州大ということになりますが、可能性があれば来年にでも行ってみようと思います。どうでしょうか。
これが無理そうなら東大の先生から指摘のあった先生に、コンタクトをとってみるということになると思います(この場合は、私の名前や東大の名前を出さずに、弁護士の先生からコンタクトしてもらうのがよいということでした)。
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