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島田荘司のデジカメ日記
第103回
島田荘司のデジカメ日記
12−18(火)、2001年、「秋好事件」の師走、2。
12月18日の、岩波先生からのCCメイル。

堀先生、島田先生。
文庫版の「秋好事件」を目を通し、もう一度私なりに考えてみました。もう少し具体的な証拠を示して、法医学の先生の意見を聞こうと思うのですが、以下のものが手に入るかどうか、検討をお願いできないでしょうか。もし手に入るようなら、知人の法医学の先生に意見を聞こうと思います。

1、「秋好事件」に掲載されている図より詳細な、血液の付着状況の図。
2、カッターシャツなどの、実物の写真(できれば大きいもの)。
3、遺体の状況の要約(島田先生の本よりもし良いものがあればです)。
4、T子(富江)の着ていた作業着の材質。

法医学の先生に尋ねる点としては、以下でよろしいでしょうか。他に付け加える必要があれば、ご教示ください。
* カッターシャツの血液は返り血ではないと言えるか。
* 背面の血液は、T子(富江)からの転写と考えてよいか。
* 血痕の付着の順番は、どの程度明らかにできるか。
ご検討、お願いします。
東大精神科、岩波明。

同日の、これへの堀弁護士の回答。

岩波先生、
弁護士の堀です。ご協力ありがとうございます。お問い合わせの点についてです。
>
>1、「秋好事件」に掲載されている図より詳細な、血液の付着状況の図。
>2、カッターシャツなどの実物の写真(できれば大きいもの)。

現在、実物が私たちの手にあります。また、血液型鑑定の際の図もあります。したがって、写真に撮ることは可能ですし、血液型鑑定の際の図をさしあげることも可能です。

>3、遺体の状況の要約(島田先生の本よりもし良いものがあればです)。

これも、死体解剖の際の鑑定書があります。

>4、T子(富江)の着ていた作業着の材質。

作業着そのものはありませんが、法廷に提出された際の裁判所の書類があります。材質も記載されていたと思います。
>
>法医学の先生に尋ねる点としては、以下でよろしいでしょうか。他に付け加える必
要があれば、ご教示ください。
>* カッターシャツの血液は返り血ではないと言えるか。
>* 背面の血液はT子からの転写と考えてよいか。
>血痕の付着の順番はどの程度明らかにできるか。

最終的には、われわれが直接にお尋ねしなければならないと思います。あきらかにしたいことの基本は、単独犯行ではないということ、つまり判決の認定が誤っているということを証明することです。
単独犯行とした場合の行為態様、とりわけ被害者と行為者の位置関係、使用された凶器、被害者の受傷状況・程度、から、カッターシャツ等の血痕の付着状況は、矛盾するところはないか、という点です。
ポイントは、血痕の付着量に矛盾はないか。カッターシャツ前面と背面の血痕の相異に矛盾はないか。付着した血痕は、行為者に付着するであろう血痕(とりわけ返り血)であると評価できるか。というあたりが基本で、関連して、先生がお書きになっている背面の血液は、T子(富江)からの転写と評価できるか、ということではないかと思います。
さらに考慮しなければならないことは、現存するカッターシャツの血痕は、事後的に付着した可能性、すなわち証拠のねつ造、あるいは、保管もしくは管理ミスによって付着したものであって、事件当時にリアルタイムで付着したものではない可能性もあるということです。とりわけ両袖のどっぷりと浸かったような血痕は、現場に慰留された状況を撮影したカッターシャツの写真の状況と異なるように思われますので、その疑いを強く持っています。

この時点では、弁護団も秋好被告も、証拠カッターシャツ袖口の異様な量の血の解釈について、警察による捏造を疑う空気が強かった。そこでこの可能性について、ぼくがCCメイルで説明した。この時点ではぼくも、この可能性を捨て去ることはしていなかった。そこでこの考え方に立って補足のメイルを書いた。

島田荘司です。
岩波先生、ご協力ありがとうございます。堀弁護士の説明に補足します。
証拠シャツに関して、一見して感じられる異常は、まず両袖口の血液付着量の多さです。重要度の優先順位としては、これは背面の血に次ぐものと考えています。背面の血に関しては、堀さんが今述べた通りです。
しかし今後われわれは、この袖口の大量血に対し、合理的な説明を与えないでおいては、反証としての説得力を欠いていく可能性があると予感しています。これまで、われわれはこの説明をあまりしてきていません。これは、これまで手つかずともいえる要素があり、あるいは突破口ともなり得るものです。そこで以下、この袖口の大量血の説明をします。

1、量が異常に多いこと。
2、被告の秋好氏も、これを意外に感じていること。
3、警察が撮影した現場の写真群において、時間が経過するにつれ、付着量が増えていくように見えること。
4、よって警察による捏造も、疑えないものではないこと。
5、万一捏造で、この付着血液を現場以外の場所から取ってきたものであるなら(警察到着の時点で、現場の血液はすでに凝固していたはず)、血液型を被害者たちのものに合わせていても、現在のDNA鑑定においては、別人のものと証明できる可能性が現れていること。当時はDNA鑑定という発想はありませんでしたので。
6、もしそうなら、これは逆転満塁ホームランともなり得ること。

万一捏造であるならば、警察は『被告が4人を殺したとしたなら、袖口の血が少なすぎる』と感じたことになります。これはポイントですね。
A.被告が、これまでに検察・司法で了解されているようなストーリーで4人を殺害していったとしたなら、袖口に、この程度の大量血が自然につくものか。
B.また自身が主張するかたちで被告が殺害を進行したなら、このようなかたちで袖口に大量血が自然につくものか、に興味があります。
また上記したような理由から、DNA鑑定も考慮されるべきと考えます。

この点について述べた秋好さんからの手紙が、大城さん経由で届きましたので、必要箇所を以下に写します。
『第四に、このカラー写真と、実況検分調書などの写真とでは、それぞれ血液の付着状態があきらかに異なっていることがわかります。このことは以前から私が言っていることですが、いまひとつ決め手を欠いていたけど、今回のカラー写真でそれが判然とした思いです。つまり本来両袖には、これほど多量の血液は付着していず、何葉かの写真を写した後、「血溜まりにドップリと漬けた」のだと考えられます。だとすると、このことはK氏の証言と合致し、両袖の血液班の濃淡とも整合してきますよね』

被告のこの主張を、即刻完全に受け入れることは冷静な態度ではないでしょうが、この可能性がもしあるとしたならば、逆転の可能性がここに潜むといえます。事件以降に、DNA鑑定という新しい技術が出てきているわけですから。
さらに「両袖の血液班の濃淡」という問題も、ここには提示されています。これをどう理解するか、という点もあります。ご意見、お聞かせください。

(今回は写真掲載はございません)
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