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島田荘司のデジカメ日記
第102回
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島田荘司のデジカメ日記
12−17(月)、2001年、「秋好事件」の師走、1。
Y先生との会見は、なかば予想した通りうまくいかなかった。それまでならここでスタックしてしまうところだが、岩波明さんの参加によって、事態を乗りきることができた。この師走は、秋好さんのため、文字通り先生と呼ばれる人たちが走り廻る半月となった。
12月15日、まず堀弁護士よりのメイルが、CCであがってきた。まずはY先生のことだ。

島田さん。みなさん。
堀です。Y先生のヒアリングの結果をどうみるか、ということについてです。おっしゃるようにY先生は、すでにお送りしたファックスを検討されていて、結論を出していましたので、その説明に熱心になられたきらいがあります。
Y先生のお話のなかでは、死体の損傷状況がウエイトを占めていますので、もう一度死体解剖の結果の資料を見ていただいて、検討してもらうといいのではないかと思います。
鑑定人候補の持ち駒がたくさんあるのなら別ですが、そうではない以上、貴重な人材だと思いますので、この一回のヒアリングであきらめるのは早いというのがわたしの感想です。
岩波先生には、Y先生にお送りしたファックスの内容をメールしました。岩波先生のお話をお伺いする機会があれば、その話を踏まえ、焦点を定めてY先生にもう一度アタックすることも検討した方がいいのかもしれません。
以下は,岩波先生にお送りしたメールです。Y先生宛のファックス文書をこのメールの後に貼り付けています。

岩波先生
福岡の弁護士の堀と申します。作家の島田荘司さんから、いわゆる「秋好事件」に関する、先日のY先生のヒアリング結果についての先生のご意見をお聞きしました。数少ない鑑定人候補ですし、今回のヒアリング結果をよく検討して、再度アタックすることもありうるかと思うのですが、その際、先生からのサジェスチョンがいただければこんな嬉しいことはありません。
島田さんから、先生宛にY先生にお送りした事件の概要説明のファックス文書の内容を送るように言われました。下記の文章がそれです。ご意見があれば、よろしくお願いいたします。

12月16日に、ぼくがCCに書いたメイル。

島田荘司です。
Y先生が、柔軟な考え方を有しておられ、個人的な面子にこだわられない方なら、ご自身の考え方を変えてくださる可能性もあると思います。その際、岩波先生からのアドヴァイスも有効となるように思います。よろしくお願いします。岩波先生の方も、よろしくお願いします。
今後、岩波先生にも、CCの輪に入っていただくのがよいと思います。これは岩波先生にもお回しします。
たびたびで申しわけありませんが、大城さんへのご連絡の方、よろしくお願いします。
島田荘司。

同日、岩波さんが弁護団のCCに、はじめてメイルを書いてくれた。

堀先生、CC:島田先生。
はじめまして。精神科医をしている岩波と申します。秋好事件について、どれだけお役にたつかわかりませんが、自分に可能なお手伝いはさせていただこうと思っております。
今年の10月に島田先生と光文社のA井さんに会った時に鑑定の件についていろいろな話がありました。そこで、私が東大の法医学教室の先生に実際の鑑定の状況を伺いました。このあたりの状況は、島田先生にお話してあるのでお聞きかもしれませんが、結論から言うと「鑑定を業務としている教室は非常に少なく、旧帝大のような大学は、ほとんど引き受けてもらえない。また本件は鑑定業務としても、もしDNAまで行うなら、相当の費用と時間がかかることだろう」という悲観的な話でした。また鑑定の可能性のある大学を、いくつか教えてもらえました。
Y先生のヒアリングについて、島田先生にお話した以上に付け加える内容はないですが、基本的な姿勢がネガティヴなような印象を受けました。今後、堀先生の資料をもとに知人の法医学の先生のコメントをもらおうと思っておりますので、これについては、数日の時間をいただければ幸いです。
東大精神科、岩波明。

同日、堀弁護士の返信。

岩波先生、CC:島田様。
弁護士の堀です。メール、ありがとうございました。ご協力いただけるとのこと、大変心強く思います。
ご指摘のとおり、なかなか鑑定をしていただける先生が少ないのが現状です。先生のお知り合いの先生のコメントを楽しみにしております。もし必要な資料がございましたら準備できるものは準備させていただきます。
よろしくお願い致します。

弁護士、堀 良一。福岡東部法律事務所。

翌17日の、岩波先生よりのメイル。

堀先生、CC:島田先生。
岩波です。これまで数度相談したことのある、東大の法医学の若手の先生に相談に行ってきました。結論から言いますと、やはりY先生のコメントはあまり信頼できない印象があります。
具体的には、「右鎖骨下動脈分枝」の切断の場合でも、必ずしも胸腔内に出血するとは限らない、外部に出ることもありうる。また「左右総頸動脈損傷」の場合、血圧が低下するのは確かであるが、受傷時に血液が「噴き出る」ことも充分に起こるという判断でした。
時間の関係で本日は「出血」に関してしか聞けませんでしたが、他の部分については、私の知識を整理してもう少し詳しく聞いてみようと思います。
そこで私の個人的な感想ですが、実際に鑑定をお願いする準備段階として、まずあきらかな事実を示して、複数の先生方の意見をお聞きするのがいいのではないかという印象を持ちました(手間はかかりますが、この方が早道なのではないでしょうか)。ご検討ください。
岩波明

即日の、堀弁護士の返信。

岩波先生
弁護士の堀です。早い対応をしていただき,ありがとうございました。
>
> 具体的には、「右鎖骨下動脈分枝」の切断の場合でも、必ずしも胸腔内に出血すると
>は限らない、外部にでることもありうる。また「左右総頸動脈損傷」の場合、血圧が
> 低下するのは確かであるが、受傷時に血液が「吹き出る」ことも十分に起こるという
> 判断でした。

大変貴重なご指摘だと思います。少し安心いたしました。
>
> 時間の関係で本日は「出血」に関してしか聞けませんでしたが、他の部分については
>私の知識を整理してもう少し詳しく聞いてみようと思います。

よろしくお願い致します。楽しみにしています。
>
>そこで、私の個人的な感想ですが、実際に鑑定をお願いする準備段階として、まず明
>らかな事実を示して複数の先生方の意見をお聞きするのが、いいのではないかという
>印象を持ちました(手間はかかりますが、この方が早道なのではないでしょうか)。

実は、その複数の先生方に行き当たるのに苦労しています。先生のメールは、他の2名の弁護士にも転送させていただいて、意見を聞いてみます
今後とも、よろしくお願い致します。

事態が、うまく転がりはじめたように思えた。
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