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島田荘司のデジカメ日記
第101回
島田荘司のデジカメ日記
12−14(金)、岩波明氏の意見。
まずY先生のヒヤリングの結果を、岩波さんに報告した。

岩波先生。
島田荘司です。ご無沙汰してしまいました。LAに戻ってきまして、やっとちょっと一段落しているところです。A井さんと作った「21世紀本格」のアンソロジー、お送りしておきました。そろそろお手元に届く頃かと思っております。
「秋好事件」ですが、堀弁護士より以下のような報告が届きました。これはやはり、岩波先生にご出馬願わないとまずい状況に向かいつつあるかと思います。その理由は、今から彼らに宛ててメイルに書こうかと思います。
軽々に判断することはしないつもりですし、弁護団の考えもあるでしょう。できれば大阪府監察医の方の方がよいであろうとも思います。しかし私の予想として、この線はもうむずかしいと思います。いずれそちらに向かわざるを得なくなると予想します。
書きましたら、そのメイルはそちらにもお送りします。よろしければCCメイルの輪に、岩波先生も入っていただいた方が話が早いかと思います。たった今でなくてもよいと思いますが。
では、おそらくまたすぐにメイルいたします。
島田荘司。

そして堀弁護士による「Y先生のヒヤリングの結果」を、後半に貼っておいた。するとすぐに、このような返信が岩波さんから来た。

島田先生
お元気ですか。LAはきっと暖かな陽光がふりそそいでいるのでしょうけれど、東京はこのごろ寒い日が多いです。
さて、Y先生の会見に関するメールを拝見しました。私自身まだ現場の状況がしっかり頭に入っていないので、とりあえず感じたことを申し上げます。
「被害者は横になっていたので、血液は飛び散らない」というY先生の意見は、必ずしも正しくないと思います。昔、学生時代に外科の手術を見学していた時のことですが、医師が誤って太い動脈を傷つけたことがありました。驚いたことに、血液は急激な勢いで2、3メートル跳ねあがりました。当然患者さんは手術台に横になっていたわけです。ですから、寝ている被害者の血液が「急激に噴き出す」ことは充分起こりますし、文献も探せばあると思います。
他にも疑問点はあるので、少し精読してからまた連絡いたします。今後の進め方について、島田先生や弁護士さんの考えも教えてください。
それから、CCメール、あるいはメーリングリストのようなものがあるのであれば、ぜひ参加させていただければと思います。金銭的な支援の面では、何かシステムがあるのでしょうか。教えていただければ、幸いです。
(後略)
岩波明。

これはその通りであろうと思う。Y先生の講義は、1箇所無理な飛躍がある。立っている時より、すわっている時の方が血圧は低い(横になっていればもっと低い)。この場合はすわっていたのだから血圧は低く、よって血は飛び散りにくい方向に行き、よって飛沫痕はつかない、そういう説明になっていた。失礼ながらこれは、「飛沫痕はつかないのだ」と言いたいあまりの、三段論法型ごまかしが感じられる。
血圧が低ければ血は飛び散りにくいのであって、飛び散らないのではない。この両者はまったく別物だ。飛沫痕で言うと、つきにくいのであって、つかないのではない。岩波先生の説明では、寝ている時でさえこのくらいに飛ぶ。立っていればさらに飛ぶということであって、すわっていたり寝ていたりすれば、一滴も飛ばず、最初からたらたら流れるだけ、ということではない。そこでまず以下のような返事を、岩波さんに書いた。

岩波先生、
ありがとうございます。大変参考になります。お教えいただいた必要部分、弁護士のみなさんにもお伝えしようかと思っております。みな喜ぶと思います。
2月末にはまた帰国の予定です。そのおりには是非お会いしたいですね。またメイルします。
島田荘司。

そして弁護団とのCCメイルには、以下のように書いて廻した。そして上の岩波さんのメイルを、後半に貼りつけておいた。弁護団と岩波先生とを引き合わせる必要を感じたからだ。

島田荘司です。
Y先生のヒアリングをお見せしたら、東大の岩波明先生より、こんな感想が入りました。ご参考までに、必要部分を以下に貼りつけます。いずれ岩波先生には、CCの輪に入っていただいてもよいのではと思っております。
岩波先生よりご質問もありますので、可能なら、これにもどなたかお答えいただければと思っています。よろしくお願いします。
(後略)

3時間ほどのちに、岩波先生より次便が入った。

島田先生
岩波です。島田先生から「先生」と呼ばれるのは気恥ずかしいので、岩波君(?)とでもお呼びください。
さて、前回のメールの続きですが、やはり島田先生のおっしゃるように、Y先生の説明は、先に結論ありきの印象が強いと思います。鑑定を引き受けたくないので、否定的に言っているようにもとれます。
またY先生が血液の「噴き出し」について、はたしてどれほどの知識や理解があるのか、疑問な気がします。というのは、法医学は亡くなってからの鑑定が業務であり、生体から実際に血液が噴き出る瞬間は、見ることはないわけです。この点については、私の方で少し資料をあたってみようかと思います。文献的に適当なものがあるかどうか、あるいは外科の血管を専門としている先生は、情報を持っているかもしれません。
またY先生のコメントの最後にある「鑑定はどこでもできる」という話は、私が聞いた限り、かなり疑問です。
そこでお願いがあるのですが、弁護士の方がY先生に作成した資料がファイルになっていましたら、私宛てに送っていただけないでしょうか。それをもとに検討してみようと思うので(場合によっては、私が直接法医学の関係者に会って意見を聞こうと思います)。
よろしくお願いします。
岩波明。

そこでぼくの方も、ただちにこのような返事を書いた。

岩波先生、
いや、やはり東大の助教授でいらっしゃるし、「秋好事件」に無償のご協力をいただいているわけですから、しばらくは感謝の気持ちで、このように呼ばせてください。
お考え、お教えいただき、ありがとうございました。私もそのように考えます。Y先生のこのような反応は、はじめてのことではありません。というより、ずっとこればかりでした。お考えをうかがい、意を強くいたしました。
ファイルの件、承知いたしました。岩波先生のご住所を告げて、堀弁護士の方に、ただちにそのように要請します。また前便にありましたご質問も、すでに弁護士の方には発しております。何か言ってはくると思いますので、ちょっとお待ちいただけますでしょうか。
岩波先生のご協力は、本当に心強いものに感じております。ありがとうございました。またメイルします。
島田荘司。

そして弁護団の方には、以下のように書いて廻した。最後に、上の岩波先生の手紙の必要部分を貼っておいた。

島田荘司です。
岩波先生より、またこのようなメイル来ました。非常に関心を持っていただき、また全面協力を申し出てくださっているので、大変にありがたいことと思います。
岩波先生より、Y先生にお見せしたファイルのコピーを、自分の方にも送ってもらえないかという申し出がありました。少し動いていただけるということですので、そのようにしていただけませんでしょうか。
岩波先生のご住所は、以下のようです。プリントしかないならこちらの方に郵送、データになっているならば、下に先生のメイル・アドレスも入れておきましたので、よろしくお願いします。
(後略)

弁護団に伝えたことを報告すると、岩波先生からこのようなメイルが来た。

島田先生。
それでは資料、お待ちしています。先生の(不詳の)弟子と思い、気楽に存分に活用してください(働きは悪いかもしれませんが)。私も自分なりに、手元の資料などいろいろあたってみます。
岩波明。

(今回は写真掲載はございません)
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