島田荘司 on line
on line top Weekly Shimada Soji top
編集室の窓から
島田荘司のデジカメ日記
第2回
写真をクリック!大きな画像で見られます。
島田荘司のデジカメ日記
島田荘司のデジカメ日記
島田荘司のデジカメ日記
8−25(金)、新横浜、ラーメン博物館に行く。
ぼくは昔から博物館偏愛癖という病気があって、世界中どこに行っても博物館に真っ先に足が向く。こういう患者にもっとも適した街はロンドンだった。しかしわが東京や横浜も、今やこういう病人にとって非常に面白い街になりつつある。博物館の醍醐味のひとつがディオラマだと思うのだけれど、そもそも博物館というものが、過ぎた文明のディオラマだ。模型好き、ミニチュア好きと、博物館好きは気分のどこかが通底している。つまり、イギリス人も日本人も模型が大好きである。
けれど英国のものは、どこか大英帝国時代の自慢の気分が感じられる。有名プロゴルファーの、優勝トロフィーの陳列みたいなところがあって、これが抵抗ある人にはなじめないだろう。でもわが国にだけは、こういう発想軸とまったく無縁の博物館があるのだ。日本人は本当にすごい。それが新横浜駅前のこれだ。
「鈴蘭事件」で里美ちゃんと石岡先生も寄った博物館。昭和33年の日本が再現された地下二階のディオラマは原寸大。並んだラーメン屋は本当にラーメンを食べさせる。なんだ、ただのラーメン屋じゃないかと言ってはいけない。その通りだからだ。今のところぼくは勝丸の醤油ラーメンが気にいっている。博多ラーメンの店の麺は、正真正銘博多のもの。秋好さんの面会で福岡に行くたびに食べていた者が言うのだから間違いはない。でもスープの味が少し違う。
地下一階には路地のディオラマがあって、街の上空をぐるりとひと巡りする。途中に夕焼け商店という駄菓子屋があり、ここにゆうばあという二十代のお婆ちゃんがいる。鼻眼鏡をかけて、顔に皺が一本もなくて、いつも小走りで風のごとくに移動しているけれど、話し方が割としわがれ声で、お婆ちゃんぽい。
そこに行くと、地下二階の広場にごつい黒自転車に跨って現れ、立て板に水の口上とともにやおら紙芝居を始めるおじさんは、どこからみても本物としか思われない。首に巻いた手ぬぐい、えび茶の粋な腹巻き、どこで売っているのか是非知りたい寅さんふうの縮みのシャツと登山帽は、あんまり板についているから、この博物館がなくなっても浅草で充分に食べていけるであろう。
彼の紙芝居は三本ほどあったのだが、最後のものはけっこう引き込まれた。「桃太郎の妹」というお話で、ぼくはだいぶん離れた階段のてっぺんで聞いていたから、ほとんど話は頭に入っていないが、なんでも成長した彼女が海を渡って冒険の旅に出るというから、これはきっとハリウッドに渡って並みいる女優を押しのけ、大有名になって鬼からファンレターをもらうというような話かと期待したのだが、続きは来週でございますとなったのでがっくり。来週はもう日本にいないのだ。
デジカメ日記 バックナンバー

Copyright 2000 Hara Shobo All Rights Reserved