誰も農業を知らない

プロ農家だからわかる日本農業の未来

誰も農業を知らない

大規模農業論、6次産業化…机上の改革案が日本農業をつぶす。プロ農家のリアルすぎる目で見た日本農業の現状と突破口。

著者 有坪 民雄
ジャンル 政治経済・社会問題 > 日本政治・経済
政治経済・社会問題 > ノンフィクション
サイエンス・テクノロジー > 科学読み物
趣味・実用・アート > 食・料理
出版年月日 2018/12/11
ISBN 9784562056132
判型・ページ数 4-6・280ページ
定価 1,980円(本体1,800円+税)
在庫 在庫あり

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その農業改革案はピンぼけです!

大規模農業論、6次産業化……机上の改革案が日本農業をつぶす。
農家減少・高齢化の衝撃、「ビジネス感覚」農業の盲点、農薬敵視の愚、遺伝子組み換え作物の是非、移民……専業農家のリアルすぎる目から見た日本農業の現状と突破口。

◎大規模農業ほど価格下落に弱い
◎6次産業化は絵に描いた餅の典型
◎無知な人ほど言いたがる「農業にビジネス感覚を」
◎なぜ農家は儲からないのにやめないのか
◎コメ輸入をシミュレーション――さほど安くならない現実
◎いま、新規就農はしやすい。しかし適性がある。
◎海外市場は開拓可能
◎兼業農家を残すべき理由
……などなど、目からウロコがボロボロ落ちてくる、誰も書かなかった〝ぶっちゃけ〟日本農業論!


◆はじめに より

神学論争は、もうやめにしませんか?

「農業は手厚く保護すべき」派と「市場原理にまかせれば農業は強くなる」派の論争は、もう三〇年以上続いています。
最近では、ハイテク農業への期待を語る人や、農作物の生産だけでなく加工や流通・販売までトータルに行う六次産業化がカギだと言う人も出てきました。

こうしたさまざまな意見はもともとは善意からのものではあるのでしょうが、農家の多くはほとんど気にしてさえいません。なぜでしょうか。
理由はシンプルです。「これでは農家を説得できないよな……」としか思えない農業論がほとんどだったからです。

専業農家に転じる前、かつて私が新卒で入った経営コンサルタント会社では、大学卒業間もない者でも、顧客である経営者に助言を与えることを求められました。まだスーツがなじんでいない新入社員の言うことを、その道一筋で何十年と生きてきた経営者が本気で聞くはずがありません。しかし、それでも助言をしなければなりません。どうすればよいのか?

「事実のみを話せ」です。自分の足でデータを収集整理し、「私が言っているのではありません。調べたところ、データが(顧客が)こう言っているのです」とやれと教わりました。
だから「足を使ってデータを集めろ!」――これが私が勤務していた会社の社員教育でした。

そうした教育・訓練を受けてきた者として言わせてもらえば、農業論を語る多くの人には、現実が見えていません。
だから農家は、「言いたいことはわかるが、それは可能なのか?」「ムードだけで言っていないか?」「その論法でいくとむしろ日本の農業はつぶれる方向に進むことになるが、わかっているのか?」などと思います。
が、わざわざ反論したりはしません。「偉い人」にモノを言えるほど自分は頭が良くないと思っていることもありますが、何を言ってもこの人にはわかってもらえないだろうと考えて、無視するのです。

しかしそういう農家だって、正直なところ農業のなんたるかが、すべてわかっているわけではありません。農業はあまりに多様で、農家や農学者でもその全貌はつかみきれないのです。

農業論をぶつ人も、そして農家も、みな農業を本当にはよく知らない――これが現実だと思いますが、一方、日本の農業がいま危機に瀕していることも事実です。すでに危険水域にあると言ってもいいでしょう。

日本の農業をどうするか――これはこの国の根幹に関わるとても大きな問題です。誰に言われるまでもなく、農家はこの問題について我がこととして毎日考えています。そして可能ならば、多くの人に農業についてわかってほしい、農家のことをわかってほしいと思っています。

農業の危機を目の前にして、浅学非才は知りつつも、少なくとも自分の知っていることは書いてみよう、書きにくいことも率直に書こうと思いました。それが本書です。
◎第1章 第二次農業機械革命の時代
IoTは革命になりうる
もうひとつの革命――遺伝子組み換え・ゲノム編集
農業のイノベーションの歴史
いま、農薬は安全である
農業IoTは地域振興と矛盾する

◎第2章 無力な農業論が目を曇らせる
無知な人ほど言いたがる「農業にビジネス感覚を」
「農業にはマーケティングが欠けている」のか?
大規模農業のアキレス腱
夜逃げする無農薬農家
六次産業化は絵に描いた餅の典型
ハイテク農業の大失敗を直視せよ
日本農業の問題点は戦前から指摘されてきた
なぜ農家は儲からないのにやめないのか
現実の議論をしよう――コメ輸入をシミュレーションする

◎第3章 農家も知らない農業の現実
誰も農業を知らない
農業知らずの農業語り
実は農家が変化するスピードは速い
農林水産省は本当に無能か
ピントがずれている農協改革案
農協解体は得か損か

◎第4章 農業敵視の構造を知る
「農家は甘えている」
農業が儲かっていた時代
「明るい農村」の時代
農家出身のサラリーマンがいなくなる意味
邪悪なクレーマー
明るい材料

◎第5章 新しい血――新規就農・企業参入・移民
脱サラ就農はラーメン店をやるより何倍も有利
誰をバスに乗せるのか――新規就農者に望むこと
農薬を否定する人は農業の適性がない
企業が農業参入で成功するためには
農業は外国からの移民を認めるべきか

◎第6章 21世紀の農業プラン
遺伝子組み換え作物の栽培を実現せよ
兼業農家を育てよ
中央官庁移転は農業道県に
海外市場は開拓可能
辺境過疎地は選別せざるをえない
農協の経済部門を半アマゾン化せよ
地元から優秀な農業起業家を育てよ
「農業経済学・経営学」を農学部から追い出せ
食育を推進し、学校給食予算を増額せよ
農家よ、戦え!

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(本体1,800円+税)

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